歌詞が衝撃的な、ミドリカワ書房の楽曲テーマをまとめてみた

小説を読んでいて、自分の好きな音楽をBGMのようにイメージすることが度々あり、音楽と小説の関連性は深いなあと実感します。そこで気になる存在が、緑川伸一、ミドシンことミドリカワ書房さん

太宰治、夏目漱石、遠藤周作などの作品を読むのが好き、と語るアーティスト・ミドリカワ書房さんの、短編小説のような楽曲についてまとめてみました。

メジャーから去ったミドリカワ書房

ミドリカワ書房さんは、ギター片手に歌うどこかレトロなアーティスト。

フォークを中心に、楽曲によってロック調、昭和歌謡風など、雰囲気の違う楽曲を手がけます。2005年7月、『みんなのうた』でSonyMusicからメジャーデビュー。

しかし、その後発表した楽曲が軒並みメジャーレーベルからの販売が難しいということで、インディーズに逆戻りするという異色の経歴を持っています。

あえて聞こえの悪い言い方をすると、メジャーから追い出されるという破天荒な経験の原因となったのは、歌詞。ミドリカワ書房さんの楽曲は、どれもストーリー仕立てになっていて、かつその内容が特殊です。

その一例を、ざっくりテーマに分けてみました。

 

恋愛関連の曲

ポップソング、フォークソングのテーマの大定番、恋愛。ミドリカワ書房さんの場合は、こんな感じです。

(※テーマ……「楽曲タイトル」)

 

  • ゆきずり……「昨日」
  • 不倫……「私の恋愛」
  • 先生と生徒……「グッドモーニング」
  • 生徒を食い荒らす保健室の先生……「保健室の先生」
  • ストーカー……「片想われ」、「恋の都営新宿線」、「誰よりもあなたを」
  • ロリコン……「こちょばしっこ」
  • 性同一性障害……「愛なるは」
  • 売れない漫画家と女子大生……「リンゴガール」
  • 売れた漫画家とその後のリンゴガール……「彼は昔の彼ならず」

 

先生視点で語られる「保健室の先生」には「若い男の身体に触れるのが生きがい」というあけすけ極まりない歌詞も登場。「ムワ……ッ」というオノマトペが世界一似合う楽曲の雰囲気にこの歌詞のマリアージュ、頭にこびりつきます。

「愛なるは」は、そのテーマの通り「はるな愛」さんからタイトルの着想を得ているそう。

「リンゴガール」と「彼は昔の彼ならず」のように、続編的な楽曲が発表されることが多いのも、ミドリカワ書房さんの特徴です。

 

家族関連の曲

恋愛に続いて、四畳半的テーマの定番である「家族」。ミドリカワ書房さんは、母目線、父目線、娘目線、祖父目線などあらゆる立場から歌詞を書いています。

 

  • 両親の離婚……「それぞれに真実がある」、「笑ってあなたにグッド・バイ」
  • 両親の離婚を経てすれた娘……「続・それぞれに真実がある」
  • 望まれた妊娠……「I am  a mother」
  • 望まれない妊娠疑惑……「I am not a mother」
  • 望まれない妊娠・中絶……「雄と雌の日々」
  • 貧乏家族……「むなしい」
  • 認知症の祖父……「恍惚の人」
  • 拒食症の娘と両親……「メシ喰えよ!」
  • 両親の性生活……「豆電球の灯りの中で」
  • 夫からのDV……「許さない忘れない」
  • 引きこもりの息子……「大丈夫」
  • 息子のいじめ……「ごめんな」、「転校生」
  • 上京する娘と父……「春よ来るな」

 

すべての人を大きく二種類に分けるのなら、「家族」を無条件な愛の象徴ととらえている人か、薄暗く消化しきれない思いのたまり場と感じている人かだ、と思っているのですが、ミドリカワ書房さんはおそらく後者なのだろうなと感じて大変心強いです。

「I am a mother」「I am not a mother」のように、表裏を描き出す楽曲も味わい深いですね。

 

犯罪関連の曲

ポップソングではメインテーマとして扱いづらい、センシティブなテーマの曲も多種多様。

 

  • 万引き……「OH! Gメン」
  • オレオレ詐欺……「上京十年目 神にすがる」
  • 幼児虐待・死体遺棄……「おめえだよ」
  • ひき逃げ……「ドライブ」
  • 死刑執行……「母さん」

 

特に受刑者から母へ送られる手紙の内容がそのまま歌詞になっている「母さん」は、なんとも言えない気持ちにさせられます。


このほかにも、整形手術の曲、整形手術を失敗した人の曲、AV好きな男の曲、宗教にハマった姉妹の曲など、分類するのは難しいものの味のある楽曲が色々あります。

アルバムでは、曲と曲のあいだにお口直しのミニドラマ(ミニコント?)も収録されているので、ぜひアルバムをぶっ通しで聞いてみてください。

 

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コメント

  1. […] ミドリカワ書房さんの記事でも書いたんですが「家族」と聞いてイメージするものは一人ひとり違い、かつ何が正しいということもありません。 […]

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