「万引き家族」「誰も知らない」などで知られる映画監督の是枝裕和さんと、電通エグゼクティブクリエーティブディレクターの樋口景一さんによる公園対談「クリエイティブな仕事はどこにある?」を読了しました。感想というかレビューというか、好き勝手なことを書き残します。

初見感想「タイトルで敬遠されそう」

これは一種の偏見かもしれませんが「クリエイティブ」という言葉ほど、枕詞にすることで戦闘力がダダ下がるワードもほかにないように思います。どれほど魅力的な内容でも「クリエイティブ」がつくとアレルギー反応を起こして泡吹いて倒れる人って絶対一定数いるじゃん。先日のナポリの男たちのチャンネル放送で「陰キャ陽キャって言葉あるけど、実際自分たちはどっちにも含まれない」「じゃあ何?」「クリエイティブ集団」というくだりがあったときにも思ったのですが、実際に所謂クリエイティブなことをしている人たちを表すにあたって「クリエイティブ」と冠してしまう冒涜、一見平和そうな顔をしているから余計にたちが悪く、敬遠される理由になりそうだなと。

というのも、この本の内容がめちゃくちゃよかったので、購入しようかどうしようか悩んでいたクリエイティブアレルギーの自分の口もとにありったけのクリエイティブをぶち込んで反省させてやりたいと思ったからです。

 

すべての人のための「若き社会人のための書籍」

さて、この作品の触れ込みは「若き社会人のための書籍」。ですが、若い社会人だけにターゲットを絞るのはあまりにもったいなく「仕事をしている人、もしくは今後する予定のある人、もしくはこれまでしてきた仕事の答え合わせがしたい人のための著書」と謳うべきです。となるとつまりほとんどすべての人のための著書であり、まあいうならば聖書。俺たちの聖書。わかるだろメーン?

春夏秋冬になぞらえて章立てされており、春から冬に向かって「仕事に就いたばかりのころ」から「仕事に慣れてきたころ」そして「仕事を通じた未来」と展望を語っていきます。手にとったそのときのテンションによって響く箇所が違い「仕事に就いたばかりのときのやり方」の話にドキッとすることもあれば、「後輩を扱う立場になったときの立ち振る舞い」の話に、後輩もいねーくせにソワソワしたりすることもあります。まじで聖書なの。だから読んだあとみんなで集まることで「どこのページでどきどきしたかせ~ので言おうよ~!」みたいな遊びも捗ります。

 

特に好きな話

コンディションによってすべてのページがウィークポイントになりかねないこの対談集ですが、特に「うわ~これ響かざるを得ん~!」「今の自分に刺さりすぎる~!」となった話を、ネタバレにならない程度にピックアップしていきます。

※ネタバレ回避のためにすべての話をアホアホ意訳しているので、正しい内容はぜひ実際にご確認ください。

■「クリエイティブな仕事」と「そうでない仕事」があるんじゃなくて、同じ仕事でもクリエイティブに取り組める人とそうじゃない人がいるよね~

■日本人って映画観たあとに「あれってどういう意味なんですか?」って正解を知りたがるけど、それを議論するまでが映画の楽しみだよね?

■答えまでの最短ルートから面白いもんがうまれるわけないじゃん

■後輩や部下を育てるために怒鳴らないといけないのは悲しい。恐怖政治でないと人が育たないってヤバヤバのヤバでは?

■後輩とか部下を育てたかったら「見てみぬふり」しときたいよね

面接で「御社の人材育成システムはどうなってますか」と聞いてくる新人がいるんだけど、育ててもらいたいっていう姿勢危険すぎん?

■自分で「成長していく」「変わっていく」という意識を持っておこうね

■自分探しをするなら自分との対話じゃなくて他人との対話をしないとだめよ

■「レギュレーションを作ってください」みたいなこと言われるんだけど、それを考えるところまで含めて仕事としてやってこうや

■役割が与えられるとコンプライアンスのことばっかり気にするだけになっちゃう

■組織にはハチャメチャ肯定してくれるお兄さんのほかに「これおかしくない?」って言ってくれる異端を入れておくとハッピー集団になれるよ

■ネット上にあるような顔が見えない意見に左右されちゃだめ

■色んな人の生き方に触れてまったく違う価値観を身につけたいよね

■正論とか「べき論」じゃなくてしゅきぴ~!ってことで仕事やってこうよ

 

くりかえしますが上記はアホアホ意訳なので、実際に目を通していただくことを強く推奨します。

 

ちなみに是枝監督の「映画を撮りながら考えたこと」も心臓がバクバクするような名著でした。

 

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