【青春音楽漫画】石黒正数『ネムルバカ』を早いうちに読むことの価値

定期的に「駄サイクル」の描写がTwitter上でバズり、石黒正数さんの『ネムルバカ』が話題になっているようです。なんだか数ヶ月~1年に1度くらいのペースで、定期的に話題にあがっているように感じるのは、作中の描写やアーティストマインドが、時代の流れとは関係なくいつでも核心をついているからなのでしょう。と言うことで、まだ『ネムルバカ』を読んだことがない人に、できれば1日でも早く読んでほしいという思いを込めて、大好きなこの作品について紹介します。

石黒正数『ネムルバカ』とは

『ネムルバカ』は、石黒正数さんによるマンガ作品。徳間書店リュウコミックスより。主な登場人物は2人。バンドをやっている大学生のルカと、その後輩で女子寮の同室に住む黒髪巨乳の入巣。

この2人の大学生活を切り取ったお話ですが、大学生らしく勉強したりレポートをしたりという描写はほとんど登場しません。

バイトして、酒飲んで、バイト先のムカつく先輩に毒を吐いて、酒飲んで、ゲロ吐いて、内職して、徹夜して、酒飲んで……とどちらかと言えばクズ寄りな生活が、どんな作品よりもリアルな「大学生」「女子」の姿を描いている良作です。あと、個人的には百合っぽく見える描写が多いところも好き。

 

駄サイクルとは一体何か?


さて、冒頭でも触れたように『ネムルバカ』がバズる(=不特定多数の共感を得る)きっかけとなったのが「駄サイクル」のお話です。

「駄サイクル」を簡単に説明すると、創作活動を行っている人同士が集まって創作をし、お互いに褒めあい、お互いに自己顕示欲を満たし合うことで満足して、本当に身になる修行や成長につながる努力から逃れ続けてしまう駄目なサイクルのこと。うわー耳が痛い。

入巣がバイト先のウザい先輩に連れていかれた「自称アーティストたちが自分の作品を発表しあうカフェ」について、ルカが称した言葉です。

ウザい先輩はそのカフェを「アーティストたちの憩いの場」と言いますが、入巣にとっては「ナルシストたちの墓場」にしか思えず、入巣からその話を聞いたルカは「駄サイクルの輪は色んな形でどこにでもある」と語ります。

 

『ネムルバカ』に描かれるワナビーの姿

こんな風に『ネムルバカ』の中には「何者かになりたいけれど、なれない、もしくは何をしたらいいか分からない」ともがく青臭い若者の姿が語られていきます。

その姿は往々にして恥ずかしいもので、かつ多くの読者にとって心当たりがあるような、絶妙な描かれ方をしています。読んでいると「やばい、自分も大学生の頃から何ひとつ成長していない……」と震え、何かしなければいけないような危機感に煽られるため、疲れているときやついだらだらしたくなってしまうときの着火材として、私は『ネムルバカ』を読み返しています。

年齢を重ねるなかで、きちんと成果なり名声なりを手にしてきた人なら、ルカや入巣やその他の登場人物の言動をほほえましく思えるのかもしれません。しかし、今なお渦中にいる人間にとっては『ネムルバカ』そのものが、駄サイクルから逃れるきっかけになるはず。

だからこそ、年齢が若ければ若いほど『ネムルバカ』を読む価値は高くなります。

周りが駄サイクルの存在にすら気づいていないとき、駄サイクルを認知し、自分自身に置き換えてすべきことを見直すことができれば「何かしたいと言いながら何もしない人」から「成し遂げた人」にジョブチェンできるから。

 

ネムルバカは学生のうちにこそ読むべき

もちろん、年齢を重ねてから読むことにも価値はありますが、ルカや入巣と同じ年代のとき、彼女たちの思いに共感しながら「でも自分は駄サイクルには入りたくない」と思えることの価値には変えられません。

とにもかくにもいかなる人も「何かしたいけれど何ができるか分からないから何もしない」まま身体が動かなくなる前に、ぜひ読んでください。お願いだから。頼むから。絶対に読んでほしい。

進学や留学など夢ややりたいことを親に言えない、反対されたときにすべきこと

またこの作品は、終わり方がとても印象的なお話なので、そのうちネタバレ込みで『ネムルバカの終わり方』のことも書きたいなあ。

 

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