先日「山口つばさ「ブルーピリオド」が最近読んだ漫画の中でナンバーワンだという話」という記事を書きました。前回の記事から考えている内容についてはあまり変わらないのですが、今回はさらに内容につっこんでいきたいと思います。
※最新刊6巻までのネタバレをおおいにはらみますのでご注意ください!
藝大受験の合否について
ブルーピリオドの6巻で、ついにここまでやってきた藝大受験の合否が出ます。受験当日の内容もめちゃくちゃアツいのですが、とにかく気になるのが合否のことです。
本年もよろしくお願いします!
たのしい年にしましょう〜#ブルーピリオド #謹賀新年 pic.twitter.com/IXJBfb04sd— ブルーピリオド⑥巻発売中▶︎山口つばさ (@28_3) January 1, 2020
単刀直入に書きますが、なぜ桑名さんが落ちてしまったんだろう、ということ。藝大へ向かう道すがら、矢口と会って「合否を確認したらライブに行く(合否に関係なく、のちに気を紛らわすイベントを用意してある)」と豪語していた桑名さん。掲示板を確認したあと「帰るか、ライブあるし」と顔をあげる桑名さんの表情があまりにもつらくてつらくて、合否の残酷さを思わずにはいられませんでした。
桑名さんは登場シーンから常にめちゃくちゃ上手い、格好いい、という書かれ方をしていたからこそ「それでも落ちてしまうんだ~~」という現実がひたすらショックです。いや、考えてみれば「1位になった人は受験に落ちる」という嫌なジンクスのある予備校のコンクールで1位をとって泣いてしまうなどフラグと言えるシーンもあるのですが、それにしたって彼女の真摯さと天秤にかけると現実の厳しさに打ちのめされます。
とは言え、この結果に納得できていないわけではありません。桑名さんの「姉」の話を見たとき、ああもしかしたら……とよくない予感を覚えていました。
受験戦争をくぐるために必要なこと
大葉先生が語る桑名さん像が本当にめちゃくちゃ鋭くて悲しくて大好きです。
「桑名は一人でずーっと姉を意識してんのよ」、「でもなぜかマキはユキに適わないと思ってんの 1位をとっても たぶん合格してもね 「姉」じゃないのよあの子の本当の敵は」
大葉先生のいうとおり、この話は合格するか否かというレベルの話ではないんだろうな。本当の敵ってなんだろう、という段階で止まっている限り、桑名さんの絵がどれほど技術的に向上しても、何千枚描き続けても、ある一点には到達できないのかもしれない。
桑名さんの絵は、大葉先生からは「姉よりも論理的で戦術的である」というような評価を受けているし、矢口自身も「姉妹って絵も似ちゃうんだよね」と笑う桑名さんに対し「似てるなんて思ったことないけど」と真正面から訂正しています。
桑名さんの合否を分けたのは、端的に言えば客観性なのかな。絵を描くとき、桑名さんは教室のすみに自分の絵を置いて離れたところから眺めつつ「ここもうワントーン暗くしよう」と判断し、よりよい状態に仕上げていくことができる。それでも自分自身を客観的に見て、姉と自分を切り離すことが難しく、結果的に今回の合否につながってしまったのだとしたら、浪人生となった桑名さんが本当にすべきことって何なんだろう。
今後の作品の展開を考える
さて、ブルーピリオドは今後「大学編」に続いていくとのことですが、もう現時点でめちゃくちゃ大好き作品ランキング1位に君臨しているため大学編と言わず大学院編、就職編、私生活編と一生続いてほしいです。ということで、今後この作品はどうなっていくんだろう、ということを熱心に考えてしまいます。
本誌を読んでいないのでなんとも言えないところではあるのですが、個人的に期待しちゃうぞ~という展開をあれこれ勝手に書いていきます。すべて捏造!
■藝大という夢のような環境、なんでもできる状況の中で、何も描けなくなってほしい
■受験当日に矢口の鏡を割ってしまった巨乳女子も受かっていてほしい
■世田介くんの作品に完膚なきまでに打ちのめされてほしい
■同様に世田介くんも矢口の作品にショックを受けてほしい
■別大学に通う森先輩となんらかの形で切磋琢磨してほしい
■なんだかんだコンパでウェイウェイみたいな大学生ムーブをしてほしい
■夏休みとかに海野さんとか元美術部メンツで旅行に行ってほしい
■同時にもう俺はだめだなにもできないみたいな堕落大学生ムーブもしてほしい
■ユカちゃんが今後の人生で「絵」と「家族」とどう向き合っていくのか知りたい
■ほかの大学に行った美術部や予備校の友人たちと自分とのギャップに打ちひしがれてほしい
■一年遅れで入学してきた桑名さんとの実力差にショックを受けてほしい
矢口くんの努力家なところが本当に好きでめちゃくちゃ憧れているのですが、だからこそ困難や苦悩に耐え忍ぶ姿が見たいと期待してしまう。あと大学生にモラトリアム、惰性、堕落、乖離などを過剰に期待してしまう節がある。
作品が今後どうなるかはまるで分かりませんが、もう何年かかってもいいので一人ひとりの今後をずっと見続けていきたいですね……。おじいちゃん、おばあちゃんになっても海の見える田舎の町でゆっくり筆を動かしながら真摯に生きてくれ……。
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