おすすめのゆるエッセイで精神の解放とデトックスをするのじゃ

エッセイや随筆が好きです。特に自分の生活が忙しいとき、窮屈なとき、やたらいらいらしがちなとき、エッセイを読むと優しく諭されるようで反省もできるし、自然と頭が持ち上がって前向きになれます。

特に、カッチリした文体のものよりも、どこかにゆるさが残るエッセイは、疲れたときに最高。ってことでいくつかピックアップしてみました。

矢部太郎『大家さんと僕』

お笑い芸人であるカラテカやべっちこと矢部太郎さんは、いい意味で芸人らしくない、穏やかなで自身と真摯に向き合っていそうな人柄がめちゃくちゃ好きです。

そんな矢部さんの人柄がかなり出ているのが、第22回手塚治虫文化賞短編賞も受賞した、大家さんとのかかわり合いを描いたこちらのエッセイ。まさに「ゆるエッセイ」と言いたくなる、終始ほんわかとした雰囲気が本当に心地いいです。

芸人さんのすさんだ感じとかギラギラした感じってすごく好きなんですが、すべての芸人さんがそうであればいいというわけでもないと思うので、矢部さんのような方が活躍してくれていることに妙に安心します。

その安心感が作品全体に滲み出ているのが素敵。

 

大槻ケンヂ『オーケンののほほん日記』

筋肉少女帯の大槻ケンヂ氏と言えば、B級映画とオカルト本が大好きで、音楽分野で伝説的な功績を残す一方作家活動にもいそしみ、小説『グミ・チョコレート・パイン』では世代を超えて全国の思春期ボーイ&ガールの心を掴み狂った存在です。

そんな大槻ケンヂ氏による、エッセイ作品がこちら。

そのタイトルの通り終始のほほんとしているかと思いきや、後半ではメンタル面における苦痛・苦悩の話が増えてきて、というか言ってしまえば精神病の話が大半。

のほほんというのは、自分に対する形容詞ではなくて自分へ向けて突きつけた言葉なのかな、と思ったり思わなかったり。

 

色川武大『戦争育ちの放埓病』

ここ数年、読書が好きですと言って「好きな作家は?」と聞かれたときには「色川武大さんです」と答えるようにしています。

本好きあるあるだと思うんですが、好きな作家さんを答えるのはすごく難しくて、絞り込むこともできないしどのフィルターを使って絞り込むべきかというのもあるし、悩み始めるとぐるぐる際限なく悩みがち。そこで登場色川先生。

色川先生が好き、という言葉に込められる情報はすごく多くて、大体の場合「阿佐田哲也じゃないの?」と聞かれます。

もちろん阿佐田名義作品も好きなんですが、なぜあくまで色川名義を選ぶのかというと、このエッセイに象徴されるようなきゃわいさが大好きだからです。

例えば「博打で金がなくなったときはかけそばにこれでもかっていうくらい唐辛子をかけて食べると、胃が焼けてその後何も食わなくて済むよ」っていうエピソードとか。色川流ライフハック。色川流一杯のかけそば。もう最高。

 

辛酸なめ子『自立日記』

まず、初版の帯がとてもぐっときます。

「ブリジット・ジョーンズよりも、みじめな女の3年間」

このコピー、作品の特性を言い表しているだけでなく、このコピーにぐっときてしまった人はもれなくこの作品を好むでしょうよ、という吸引力も兼ね備えていて、本当にキャッチコピーとして完璧です。

実際の内容は、いわゆる「みじめ」なギャグ的な要素もあるにはあるんですが、そんなことより辛酸さんが毎日をめちゃくちゃ楽しんでいることが伝わってくるのがすごくいい。

とてもアグレッシブで、色んなところに出かけては色んなものを見聞きして、自分の感覚に落とし込んで言葉にしているところがすごく好感が持てます。

旅行番組を見たときよりも、純粋に「外に出たい!」という気持ちになります。

 

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