完成度の高いAORやドリームポップ、ベッドルームポップが好きな気持ちと、荒削りなインディーロックが好きな気持ちは一見相反するようですが、案外そうでもないのかもしれないと思いはじめています。AORやドリームポップの「この場には存在しないような、ちょっと浮世離れした感覚」を、心身を捧げて楽器を弾き狂っているインディーロックバンドにも感じるときがあり、どちらも聴いていて同じくらいどきどきします。そして「Those Dancing Days」のライブパフォーマンスは、いつ見てもカーッ、好きだ!と唸ってしまいます。
Those Dancing Daysとは
スウェーデンで結成されたガールズバンド、Those Dancing Days(ゾーズ・ダンシング・デイズ)。ストックホルム出身の女の子5人で結成された、インディーロックバンドです。ちなみに2005年の結成当時、メンバー全員女子高校生だったという、なんというか正真正銘「ガールズバンド!!」という感じのガールズバンドです。
結成後は、ロンドンのWichita Recordingsと契約し国内外の広いフィールドで活躍。2008年には、来日公演も行っています。残念ながらすでに解散しているバンドですが、リリースされているEPおよびアルバムはぜひ多くの人に一聴してもらいたいです。
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バンド名の由来について
ちなみにバンド名は、レッド・ツェッペリンの『Houses of the Holy』からとっているそうです。B面の1曲目に収録された『Dancing Days』に感銘を受け、バンドを結成しそのままバンド名にしてしまうあたりも青春音楽マンガのあらすじのようでときめきます。
「めっちゃかっこいい音楽見つけた!」って言って、誰かの部屋に集まって聴いたりしたんかな。スウェーデン版、そしてガールズ版の「グミ・チョコレート・パイン」を期待してしまう。
Those Dancing Daysの楽曲について
そんなThose Dancing Daysですが「どんなバンド?」と聞かれると、答えるのがなかなか難しいバンドです。曲調は幅広く、いわゆるドリームポップやシューゲイザー系譜の浮遊感重視のおしゃれな雰囲気の曲もあれば、突然パンクキッズのようなムーブをし散らかす曲も。あえて聞こえの悪い言い方をするなら「固まっていない」のだけれど、そのちょっとあやふやなところが彼女たちの楽曲に説得力を与えているようにも感じられます。
特に聴いてもらいたいのが『Daydreams And Nightmares』に収録されている『Fuckarias』という曲。YouTubeにMVもあります。もうめちゃくちゃに荒削りでそこが最高にいい。音源でさえこの感じなのだから、ライブではどうだったんだろうと考えるとちょっともう、洒落にならんくらいワクワクしてしまう。
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タイトルからお察しの通り、なんかそういうコンセプトの曲なのだと思います。なんかそういうコンセプトの曲を、若い女子が本気でやるというのは、もうそれだけで他者が太刀打ちできなくなるのに十分な要素を備えています。ほんの少しでも重心がぶれたらバンドとしても曲としても失敗してしまうだろうな、でもギリギリOK!ラインをずーっと保っているな、という絶妙なバランス感覚に気持ちがぎゅーっとなります。
いやでも本当はぶれていいはずなんだよな。リスナーはぶれているところがみたいんだよな。
「ぼくはいつもぶれている」というのは細野晴臣先生の「文福茶釜」の1ページ目にバチコーンと書かれている文章ですが、細野先生の仰るとおり、右に左に大きく身を振っているからこそその動力を使って前に進めるわけで、妙に達観したアーティストに「なんなんだろうこの人は?」と惹かれるのと同じくらい、右に左に大きくぶれているアーティストにも惹かれてしまいます。
もちろんThose Dancing Daysも嫌いになれるはずがない、適度にバンドマンだし適度に普通の女の子です。本当に信頼できる。十何年経ってから、ふと思い出したように再結成してくれないかな、とひそやかに期待しております。
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