「夏休みの宿題にいかにして打ち勝ったか問題」は、学生にとって重要な問題であると同時に、大人になってからも「やらなければいけないこととどのように向き合える人間か」を図る目安として、付きまとい続ける問題です。できれば夏休み最終日は宿題を完璧に終わらせ、新学期にそなえて早めに眠りたい。実際それができる学生さんは、社会人になってからも大成まったなしルートだと思います。しかし実際のところなかなか難しく、その理由は世間でいいとされている課題との向き合い方が本当は非効率的だからではないかと考えています。現役の学生さんも、学生をとうの昔に卒業した方も、この「宿題終わらせ問題」についてちょっと考えてみませんか。
「毎日コツコツ努力する」は非効率的
宿題のやり方について考えるときお父さんやお母さん、先生などに伝えられた「毎日コツコツ、少しずつやりなさい」という言葉をかけられたことを思い出すのではないでしょうか。大人たちはもうなにかとこれを言います。毎日やれ。コツコツやれ。サボるな。休むな。寝すぎ。早く起きろ。など。
しかしながら、塾講師を勤める中でこのやり方が勉強に対するモチベーションを著しく下げているなと思うシーンが山ほどありました。正直、非効率的だなと思うくらいに。
というのも、毎日コツコツやる、という目標は「これから先の毎日、同じだけの時間の余裕があること、また同じコンディションで宿題に取りかかれることを前提としている」から。
今日のノルマを達成し「毎日1ページずつなら余裕!」と感じたとしても、明日もその次も同じような余裕があると思うのは危険。「体調を崩してとても勉強するモードになれなかった」「家族の都合で外出することになった」ということもあるはず。
無理に「毎日勉強しなきゃいけないのに……」と思うことで、イレギュラーな事態に対し敏感になりすぎたり、勉強ができなかった日は自己嫌悪に陥ったりするようになりかねません。
責任感の強い人ほど「毎日」縛りは向かない
塾講師をしていたときに感じたのは、責任感が強くしっかりした子ほど、コツコツ勉強法に足をとられやすい傾向にあるということ。
「自分で決めたことは必ずやりたい」という強い気持ちがあるほど、「毎日」というノルマが達成できなかったときに受けるダメージも大きくなります。もちろん、仮に1日や2日ノルマが達成できなくてもすぐに挽回できれば何も問題はないのですが、こんな気持ちになりはじめたら要注意。
- 「昨日できなかったから、その分も今日やらなきゃ……」
- 「最近ちゃんとできてないから今日こそちゃんとやろう……」
- 「昨日やっておけばよかった!」
- 「○○さえなければ、昨日のうちにできたのに!」
- 「1ページならできると思ったのに結局できなかった……」
こうした気持ちは自己否定感につながり、最終的には「勉強やりたくない」「宿題なんかどうでもいい」「もうなにもしたくない」というめちゃくちゃネガティブな気持ちにもつながりかねません。
定められた課題をモチベーションを保ちながら片付ける方法
それなら、責任感の強い人は限られた時間の中で目標を達成できないのかと言えば、もちろんそんなことはありません。そして何より、コツコツ勉強していくことを否定しているわけではありません。
大切なのは「毎日」という縛りを外すこと。
例えば問題集を「毎日1ページ」進めていけば、単純計算で一週間で7ページ片付いているはず。それなら最初から「一週間で必ず7ページ」という目標に切り替えるだけです。
「それなら結局同じことやんけ!!」と思えるのですが、たどり着く目標は同じであっても「できれば毎日、でも毎日じゃなくてもいい」という決まりが、どれだけ心の支えになるかということ。急な予定ができたときだけでなく「どうしてもやる気が起きない」という日にはパスもできるということが、目標達成の大きな救いになるはずです。「絶対に毎日、具合が悪かろうと調子が乗らなかろうとやる」ということができればそりゃ理想だけど、自分のバイオリズムをつかむことってめちゃくちゃ難しいです。現役アスリートの方でも苦戦していることを、一般人が完璧にやろうとするなんて無謀なもんだぜ!
その代わり「今日はハイパー調子がいい!」という日になんページも進めておけばいいんです。例えば1日で7ページできちゃえば、残りの1週間は遊んで暮らしたっていいんだし。この余裕こそ、モチベーション維持の重要なポイント。
毎日じゃなくてもいい毎日チャレンジで実感したこと
私は学生ではないんですが、誰に強いられるでもなく毎日お絵かきをするというよく分からないチャレンジを1年半くらい続けています(詳細:絵描きド初心者が毎日描いたら上手くなれるのか実験~1、2ヶ月目~)。
見てもらうと分かるのですが、毎日と言いながら全然毎日やってないです。15ヶ月目あたりとかひどい。まるでやる気がない。自分でも見ると笑っちゃう。
それでも、だからこそ一年半も続けられています。きっと私が自分自身に対しブリブリに厳しくて「絶対に!!毎日やるんだよ!!自分で決めたんだからよ!!」という考え方の人間だったら、すぐに心が折れてやめていたに違いない。
「なるべく毎日描こう、調子よければ2枚でも3枚でも描いていいし、できなければやんなくてもいいし、でもまあ一ヶ月でトータル30枚くらいいければそれでいいかな、クオリティは不問だよ、好きなもの好きなように描こう」という遠方に住んでいる孫を溺愛しているおばあちゃん並みのクッソ甘な条件にしたおかげで、結果的に高いモチベーションのまま続けられています。これを「コツコツ続ける」ということに換算してもらえるのなら、こんなこと誰でもできると思う。「自分はコツコツ続けることができない人間だ」なんて人はいないと思う。みんなでコツコツやってきましょ、自分をデロデロに甘やかしながら。
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