先日、書店をふらふら見て回る中で気になる一冊と出会いました。それが、京都造形芸術大学・東北芸術工科大学発行の「文芸ラジオ」。すごくいい出会いだったので初読の興奮と感動を残しておきます。
突然出会った「文芸ラジオ」
いつものように「文藝春秋」とか「文學界」とか「yomyom」が置いてある文芸誌コーナーを眺めていたら、はじめて見る雑誌が目に留まりました。それが京都造形芸術大学・東北芸術工科大学が手がけている文芸雑誌「文芸ラジオ」。
私が手にとった号は、表紙が柳本光晴さん「響~小説家になる方法~」でした。柳本光晴さんと担当編集者のインタビューが掲載されているとのこと。もともと「響」の作品は読んでいたのですが、そういえば作者さんについてはほとんど知らず、どのような環境で作られた作品なのかふと気になって購入することに。ぱらぱらっと見た内容にとても惹かれ、自宅まで持ち帰る時間が惜しかったので、そのまま書店の向かいのカフェに入り読みました。まさかそのまま最後のページまで読み続けることになるとは思わず……!
柳本光晴さんのインタビューがとてもよかった
お目当ての柳本光晴さんのインタビューと一問一答、とても読み応えがあり、作品づくりに向けている熱量がバキバキ伝わってきてプラスチックカップを持つ手が震えました。
- 「響~小説家になる方法~」はどのように生まれたのか
- 一番気に入っているシーンはなにか
- どのようにストーリーを考えているのか
こういう、ファンが絶対に知っておきたいポイントを知れる喜びもあるのですが、なにより柳本さんの回答が逐一アツくて胸が震えます。一部抜粋するなら「主人公は強くないといけない。憧れたい」とか。そう、そうだよねそうなんだよね……!私たちはそういう感覚が気持ちいいからまんがを読んでいるんだ……ごく当たり前のことを、中の方に改めて言い当ててもらった気持ち。柳本さんが優れた作り手の前に優れた読み手なのだと伝わってきてとてもぐっときました。
インタビュー後の「作家デビューガイド」の充実
「響~小説家になる方法~」を受けて、特集ページのその後は作家デビューにまつわるページが組まれています。そんでまた、これら各ページからあふれ出すフレッシュな熱意がたまらないんだ。
- 乾石智子さん、柚月裕子さんの対談
- 池田雄一さん「新人賞は何のためにあるのか」
- ネット発作家のなり方
- 新人賞が獲れる人、獲れない人
- 新人賞タイプ別チャート診断
- この副賞がすごい!
編集者目線の情報があったり、エブリスタやカクヨム、星の砂などの使い方やそれぞれの特徴、違いがあったり、トラディショナルな作家デビュー方法はもちろん、そうでない切り口もカバーしているところがとてもフラットで、出版社のしがらみを感じさせなくて、こういうのが読みたかった……。
もう一つの特集「変身」
作家デビューガイドに続く、もう一つの特徴が「変身」。インタビュー記事はタイバニのワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹役の声優・平田広明さんや「累 かさね」の作者松浦だるまさん、アクション俳優佐藤陽介さんなど。
変身願望の追求や、変身にまつわる論文、芝居を通じて変身することの研究。こちらも好きと関心をこれでもかというほど突き詰めたのだろうという感覚が伝わってきて「作家デビューガイド」に負けず劣らずアツい。
結局コーヒー飲みつつ最後まで目を通し読みきったあとは、熱意にあてられてそれこそ少年漫画の主人公のような精神状況になっていました。今すぐ自分のすべきことをせねば、的な。こういう、焚き付けられるような存在を常に身近においておきたいと思わされるいい出会い。次号も楽しみです。
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