以前、怖いネタの王道とも言えるネタについてまとめましたが、古今東西、ベテランから若手まで怖い漫才や怖いコントをしている芸人さんは本当にたくさんいます。ということで今回は、いわゆるAGEAGELIVE世代の東京吉本芸人から、怖いネタをピックアップしていきます。動画サイトにアップロードされているネタもあるので、興味があったら探してみてください。
しずる
■だるまさんが転んだ
舞台上で「だるまさんが転んだ」をはじめるこのネタは、この言葉を繰り返すたびに「田沼さんが転んだ」のように少しずつ変わっていく、言葉遊び系のネタです。少年の格好をしながらもストーリーテラーのような立ち位置の村上さんが「だるまさんが転んだ」を繰り返すたび、池田さん扮するおじさん「田沼さん」がそのストーリーの通りに動いていきます。
次第に「田沼さんは殺し屋」 「田沼さんが殺した」というように薄暗い雰囲気になっていきます。このネタ、オチは色々あるんですが、最終的に田沼さんの人生が転んでしまい始末される、というような短編小説っぽいオチに落ち着きます。
しずるはこの他にもシュールと不気味さをミックスしたネタがたくさんあります。カップルの「だ~れだ?」といういちゃつきからはじまり、そのままの状態で相手が誰か分からないまま生活をし続け、結婚したり出産したり、年齢を重ねて彼女が亡くなってはじめて相手の顔を見たら彼女ではなかった、というネタも初見のときかなり衝撃でした。
クレオパトラ
■悪気なし
こちらは、痴話喧嘩をしたカップルを題材にしたコント。機嫌を損ねてむっつり黙り込む、桑原さん扮する彼女の機嫌を取るため、長谷川さん扮する彼氏が「悪気はなかったんだ!」と何度も何度も繰り返しながらハイテンションでアプローチし、試行錯誤するネタです。彼女にスライディングしたり、キャスター付きチェアーで突撃したりというテンションの高さと、どんなアプローチにもまったくなびかず、ひたすらノーリアクションで怒り続ける彼女のコントラストが面白い。
そしてオチでは、どんなに「悪気はなかったんだ」と繰り返しても聞く耳を持ってくれない彼女に対し、彼氏が「いい加減機嫌直してくれよー!」と言いながら身体を揺らします。すると力のない彼女はそのまま倒れこんでしまい、真っ赤に染まった背中とそこに刺さっているナイフがむき出しになります。そして彼氏は最後に一言、「悪気はなかったんだ」。
クレオパトラはシュール&怖い系ネタが面白いのはもちろん、細部まで作りこんだ単独ライブのクオリティが高いともっぱらの噂です。コントの域を超えて舞台や芸術分野も含めて幅広く活躍しているので、同業種内で例えるのも失礼な話ですがラーメンズのような活躍を期待してしまいます。
パンサー
■旅行の計画
ウキウキしながら旅行の計画を立てている向井さんと尾形さんのもとへ、フルフェイス+目出し帽+黒尽くめ+大きなバッグを持っているという明らかに怪しい様相の菅さんが「ごめ~ん遅れちゃった!」と合流するところからはじまるコント。近所の銀行で起きた強盗事件のニュースを見た向井さんは「絶対お前じゃん!!」と言うものの、軽く否定しながらそしらぬ顔で旅行の計画に付き合う菅さん。「足がつかないように逃亡したい」という旅行のレベルを超えた計画を立てる菅さんと、ハイテンションすぎて菅さんの怪しい言動をまったく気にしていない尾形さんのかみ合わないようなかみ合っているようなやりとりが続きます。
オチは、菅さんが席を外した瞬間を見計らって向井さんが「あれ、絶対さっきニュースでやってた銀行強盗の犯人だよ!俺、警察に通報する!」と電話をしはじめ、それまで笑顔&ハイテンションだった尾形さんがすっと真顔に戻って取り出した銃を向井さんに突きつけ「……うるせえ人質だなあ」。向井さんの「……え?」という小さなつぶやきとともに暗転して終了。
メディア露出も増えて、尾形さんの底抜けに明るいキャラクター性が浸透したタイミングでこんなネタを繰り出すパンサー、これこそまさにメンタルッッ!!!サンキュー!!!!
ハイキングウォーキング
■キモヒゲ危機一髪
ランダムに黒ヒゲのおじさんが飛び出す「黒ヒゲ危機一髪」のゲームを模したこのネタ。ご察しの通り、Q太郎氏がキモキャラとして樽の真ん中に鎮座し、ゲームプレイヤーである松田さんが剣を刺すたびに顔芸をしたり悶え苦しんだりします。
オチは、ある一箇所に剣を刺したときついに飛び出してきたキモヒゲおじさんが松田さんを追いかけはじめ、絶叫とともに追いかけっこがはじまり、突然暗転。次に照明がつくと、さっきまでキモヒゲおじさんがいた樽の真ん中に松田さんの姿が。実はキモヒゲ危機一髪のプレイヤーは、次のプレイヤーが来るまで新たなキモヒゲとして拘束されてしまうというシステム。松田さんの「イヤだあぁー!」という絶叫が響いて終わり。
ハイウォのネタでは「ループ・ザ・ルーム」という、タイトルの通り暗転を繰り返しながらひたすらループするネタも不気味です。顔や動きで笑わせるキャッチーなキャラクターのイメージが強いハイウォですが、単独ライブなどで見られるシュールなネタやストーリー性のあるネタも面白いです。
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