2019年のM-1グランプリで、お笑いにおける「従来の常識」が通用しなくなってきたさまをまざまざと見せ付けられてしまいました。ざっくり言うと「人をイジり傷つけるお笑いから誰も嫌な思いをしないお笑いへ」という変動です。この変化は、このところ言われている「お笑い第七世代」というカテゴライズともかかわっている気がしてなりません。

「お笑い第7世代」とは

テレビやメディアで語られることの多い「お笑い第7世代」について、NIKKEI STYLEの記事にこんな文言がありました。

主に平成生まれの芸人を“第7世代”とくくって呼ぶことで、テレビや雑誌で特集が組まれるなど、若手にスポットが当たるようになった

こうなってくると気になるのは、結局お笑い第7世代とはどういうことなのか、定義はなんなのかということ。

 

「お笑い第7世代」の定義

そもそもお笑い第7世代とは、霜降り明星のせいやさんがラジオの中でぽろっと言ったワード。それが一人歩きしはじめ、巡り巡って大きなブームのようになりました。

本人たちも言っていたのですが「ここからここまでが第7世代だ、という明確な定義はない」、「それなら誰が第6世代で、第5世代なのか、どこから第8世代なのかという決まりも当然ない」とのこと。つまり、それぞれが自分の思う第7世代を思い浮かべながらNewジェネレーションについて語れるという、ある種使い勝手のいいワードなのです。若干の言ったもんがち感もあるもんね。今日から俺は第7世代だ!と松岡修造氏のテンションで言えばそうだお前は第7世代だ、となりうる。

その中でも「第7世代と言えば彼ら」というように、インタビューや特集でそのワードが出てくるたびに挙げられる定番メンバーも存在します。主に次のようなメンバーは、お笑い第7世代の顔と言ってもいいのではないでしょうか。

  • 霜降り明星
  • ハナコ
  • 四千頭身
  • EXIT
  • 宮下草薙

きっちりとした定義はないという前提の上ですが、強引に一般的な世代論に絡めるなら先ほども挙がっていたように「平成生まれ」「ゆとり世代以降」にあたる人が多いイメージです。

生まれたときにはすでにバブルが弾けていて、毎年毎年なにかしら氷河期と言われ、テレビをつければ毎日不況だこりゃヤベーと語られ、お金の使い方より先に貯蓄をしろと教えられた第7世代。なにかと「ギラギラしてない」「スカしてる」「達観してる」と言われがちなのは、生まれた瞬間からはじまる細く長い諦めが原因なのかもしれません。

 

【追記】

オールナイトニッポン0、2020年2月28日の放送分にて「第7世代」についてさらなる言及がありました。

「俺は第7世代とは言ったけど『お笑い第7世代』とは言ったことない」

「アスリートやYouTuberの人も含めて同年代の人とポケモンとか自分たちの世代でしかわからん話で盛り上がれたらと思った」

「NARUTOの7代目、とか7という数字が好きだっただけで別に意味はない」

「反旗を翻したい」

「どこかで第7世代被害の会をやらないかん」

 

お笑い第7世代以降の特徴と、現在のお笑いに求められるもの

繰り返しますが昭和生まれであれば第7世代ではないというわけでもないし、もっと早くデビューしてバリバリ活躍している芸人さんに、第7世代と同じようなテンションを感じることもあります。その上で今のお笑いの形について考えていたところ、ある一件を思い出しました。

以前、社会学者の宇野常寛さんが、YouTuberカジサック(キングコング梶原)さんのイベントに呼ばれた際に宇野さんの「できなさ」をイジり笑いにしていくスタンスに立腹してイベントを途中退席したことがありました。

当時、宇野さんのTwitterには「大人なんだからイジられたくらいで拗ねるなよ」「お笑い芸人のイベントに出ている時点でそうした展開があることは予想できたはず、それも了承して出演したんじゃないのか」といった内容のリプライがたくさん寄せられていました。

それに対し宇野さんは次のように回答しています。

「僕は冒頭から繰り返し梶原の「イジリ」的な言動が嫌だと指摘したこと、そしてこういう言動がこの国のイジメ文化の温床なのだと告げた」

「『空気を読んで』梶原主役のバラエティゴッコのいじられ役を甘受することは『正しい』ことなんだろうか。そんなわけはない、と思った」

「『芸人』なら、バラエティならイジメが許されるなんて間違ってる」

この一連で私がもっとも顔をしかめたのは「芸人とはそういう職業なのだから仕方ない」「芸人はハゲもデブもネタにして、自分の身を切り売りして笑いをとってるんだ」みたいな意見で、きっとカジサックさんを擁護しているんだと思うけど、いやお前が一番カジサックさんに対して失礼だよと思ってしまう。芸人をナメ腐ってるな。みんながみんなそういうことでしか笑いをとれないという前提、負の習慣と常識が生み出した負債です。

 

私はバラエティやお笑いに逃避を求めすぎているので、急にシリアスになったり「イジメ」みたいなワードが入ってきたりすると、いやいややめようや~という気持ちになります。そういう意味では前述の方々の擁護の気持ちも分かります。

しかしそうやって目を背けて話題を摩り替えてきたことが巡り巡って募り募って、飲み会や職場での自分自身の居心地の悪さにつながっているのだとしたら、これまで良しとされてきた笑いが覆されることは少なくとも一個人にとってありがたいことなのかもしれません。

もちろん、お笑い第7世代にあたる人たちが、みんながみんな「こうした常識を覆してやろう!」と思っているわけではありません。むしろ真逆に進んでいる人もいます。それでも少なくとも今、笑いをとるのなら、勘のいい人や感度のいい人も笑わせる芸が必要であるということには違いありません。

 

お笑いだけでない「第7世代」

さて話は戻って。お笑い第7世代一人者である霜降り明星は、クイックジャパンの特集号において「お笑い第7世代に限らず、○○第7世代というかたちで、Youtuberやアーティストなど他ジャンルの方とも連携していきたい」という旨の話をされていました。そのときに挙げられていたのが、ヤバイTシャツ屋さんや岡崎体育さんなど。たぶんもっといるだろうし、漫画界とか、文学界とか、スポーツ界とかアイドル界とか俳優界にもまだ見ぬ第7世代がいるのでしょう。

新しい世代の色や価値観の良し悪しはともかくとして、こんなに目に見えて何かが変わっていく瞬間を、リアルタイムで見つめられる事実にすごくどきどきします。わくわくします。

「大人だから、仕事だから」という理由でみんながみんな少しずつ窮屈な思いをすることがない、なんていうのは夢幻かもしれませんが、少なくともあらゆる悪癖が断ち切られていきますように。それは特定の世代をつかまえて「こういう風にしてね」と頼むことではないんだけどね。

 

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