第四回女芸人No.1決定戦 THE W 2020の感想

THE W 2020を見ました。自分の備忘録として感想を残します。だいたい初見の方で前情報がまったくなく、筋違いなことも多いと思いますが、ガチで感じたことを素直に書いています。

TEAM BANANA

最後に見たのが10年くらい前だったので、いい意味でこういうコンビだったっけ?という驚きがあった。高校生くらいの女の子が、シンメトリーのシャツみたいなのを着て、zipper全盛期のようなカラーのボブに整えて、可愛い女芸人ナンバーワンと謳われているイメージを10年間冷凍保存していた。

久しぶりにネタを見た第一印象として【「女芸人のネタ大会」の一発目のネタ感】があまりに強烈すぎてびっくりした。5000人が考える「女芸人のネタ」感、これはこういう大会だから寄せてきたのか、彼女たちの芸風がずっとこうなのかわからないし、良いとか悪いという話でもなく、正直に言えばやや時代遅れな気がしないでもないが、強い意志でやり続ければ世間が一周したときに最先端を独走する人たちになるのだろうなと雪の宿をぱりぱり食いながら思いました。

 

オダウエダ

初見。ネタ前のプロフィールVだけでとても惹かれてしまった。愛媛のゴリゴリのヤンキーで駆け込み寺で浄化ってなんなんだよ。説明されてもわかんねえよ。浄化済の割には目ぇ死にすぎだよ。

もうそのVのみで軽くファンになってしまったので、ネタがはじまったらむしろ意外とシンプルで分かりやすいネタをやるんだなと思った。目玉が飛び出てくれて本当に良かった。目玉が飛び出るという現象にあんなに安心したことはない。目玉がAメロBメロサビ転調すべてを担っていて、目玉飛び出しまでのすべてがイントロだった。目玉が飛び出して音楽がかかったとき、なぜかわからないけど涙が出た。別に笑いすぎてとかではない。当然悲しかったわけでもない。なんかわからんけど涙が出た。理屈で処理できない感情が粟だった。感銘を受けていた。琴線に触れていた。

 

にぼしいわし

初見。うんていのネタ。M-1をはじめほかの賞レースやバトルライブでも見られる光景だけれど、正当派ネタとシュールネタを並列して「どちらが面白いですか」という質問をしたら、前者に投票する人が多くなってしまうのは仕方ない。難しい。面白いの対義語はつまらないではないと私は思っていて、また、お笑いのネタを見て心が動くとき、すべて「面白い」から動いているというわけでもないと思う。自分の教養が追いつかないがために理解できない崇高な対象を「ちょっと訳がわからないです」「意味わかんないからつまんない」と切り離すことに対する抵抗感、に似ている。もし今後、賞レースでウケることが一切なかったとしても、むしろそっちの方がかっこいい。ちなみにマヂカルラブリーの野田クリスタル氏がコンビ結成前のドンズベリピン芸人時代に同じように考えていたらしく自分がウケないのは面白すぎるからだと解釈していたそう(しくじり先生参照)なのだけど、まじであながち間違っていないと私は思います。

 

紅しょうが

初見。シンプルにすごく好きだった。ツッコミの方、ネタ開始直後の二言三言で「この人、めちゃくちゃデキる人なのではないか?」と思わせる何かがあった。何かが何なのかは知らない。プロレスさんの方が「コンビの の方」で、ツッコミの方が「じゃない方」かと思いきや、実はそんなことないパターンの匂いが立ちこめていた。ハッタリかもしれない。この手のネタ、私はすごく好きだけれど、いわゆる「賞レース好まれ」しすぎてうんざりしている人もいるのだろうなと思う。

 

ターリーターキー

初見。オンバト世代のようなネタだと思った。いい声をしていらっしゃるところと、ヤケクソ気味なところはとても好感を持てた。プロフィールVでうれしい瞬間は?というような話だかなんだかで「ネタをやって、ウケたときがうれしいです」みたいなことを言っていたのがとってもとっても印象的だった。そらそうだろうよ、芸人だもの。それともこのVを撮ったときはまだ芸人ではなかったのか?

 

Aマッソ

ヒコロヒーさんとのラジオで、THE Wにかけるただならぬ思いを語っていたからこそ妙にひやひやした。ネタが終わった瞬間、第一に思ったのは「大丈夫か?」だった。大丈夫か?このネタであがれるのか?と、正直、思ってしまった。面白かったと思う。審査員の誰か(誰だっけ、田中さんかな……)が言っていた通り、お笑いの今後をがらりと変える可能性のある革新的なものだった、のかもしれない。それでも正直、手法でやったったるぞ、見てる奴アッと言わせたるぞ感に対し、一つひとつのネタそのものの面白さが周回遅れになっている気がしてならなかった。今さらニコニコ動画いじるか?それで見ている人が「あっ!ニコニコ動画だ~!おもしろ~い!」って笑うか?しかしながら「チェイッ」は声出して笑った。加納さんが「イルカも泳ぐわい。」のネタ(エッセイタイトルではなく、元ネタのほう)を愛するように、私も、Aマッソのネタが理屈を超えている瞬間を楽しみにしたい。

 

ゆりやんレトリィバァ

プレイヤーズプレイヤーを地でいっている人だと思う。アーティストでいうところの、技術はあるがテレビに出たりお茶の間でちやほやされたりするわけではないスタジオミュージシャンみたいなもんで、川島さんが審査時に言っていた「深夜二時に見たら笑い死ぬと思う」みたいな言葉がすべてだ。それでも、おかしな話だけれど、ゆりやんさんのネタをつまらない、理解できないと言っている人を見るとどこか安心する。プレイヤーとお茶の間の意見が合致する社会は、なんとなく不健全だと思う。にぼしいわしの感想と被るけれど、全員が笑わなくても一人が崩れ落ちるほど笑うみたいな芸人が健やかに実績を重ねてくれるととっても安心します。

 

吉住

初見。マンション管理人のプロフィールだけで、ちょっと好きになってしまった。TEAM BANANAのネタを【「女芸人のネタ大会」の一発目のネタ感】と言ったけれど、そのテイストに舌触りのいいアイシングをかけたのが吉住さんのネタだと思った。どちらが良いかは好みの問題だと思う。「こういう女ってムカつくよねー」に共感する層も、ありもしない幻想を浮かべながら「女同士の戦いって本当に怖いよなー」と俯瞰しようと背伸びする層も、またそれらの二者に憤りを覚える層も、すべて巻き込んだネタが二本続いた(=偶発的なものではなかった)ので、これは優勝するかもしれない、と思った。

 

はなしょー

初見。病院のセットと、おばあちゃんに扮する姿を見た瞬間はひやっとした。いやだな、と思った。おばあちゃんのさまざまな挙動がボケになり、後からやってくるお孫さんがツッコむ展開だったら、心が痛くてとても笑えないなと不安を抱いていた。実際は、心配していたこととまるで逆だったので安心したし、ぺこぱ的な、2020年的な、令和的なお茶の間への配慮に満ちたネタだったので、きっと頭のいい方が作ったネタなのだろうと思った。こういう方々が、すべてのバラエティ番組に必ずいてほしい。きっと愛される。

 

ぼる塾

初見。名前は聞いたことあった。ネタははじめて見た。三人全員に「クラスのいじっていいのか悪いのかわからない子」みたいな雰囲気がはびこり、それごと笑い飛ばすことは私には難しかった。きっと単純接触の法則で、何度も見ているうちに慣れていって気にならなくなっていくのだと思う。「クラスのいじっていいのか悪いのかわからない子」への、安いながらも一応配慮として一歩踏みとどまる感覚を、「慣れ」で度外視することがいいのか悪いのかわからない。ネタの雰囲気が割と古いというか、トラディショナル漫才でびっくりした。今後ますます、タレントとして売れてゆくのだと思いつつ、すげ~テレビっぽ~~~いという感想。

 

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