続・ベッドルームポップとは一体何なのか。ドリームポップとの違い編

以前、記事で「ベッドルームポップとは一体何なのか」ということを書きました。あれからしばらく経ち、今回またちょっと思うところがあったので続編として書いていきます。

ベッドルームポップとは何なのかという定義について

そもそもベッドルームポップとは何なのかという話。以前も引用した、タワレコ公式さんの定義を見ていきましょう。

〈ベッドルーム・ポップ〉の定義は人それぞれだろうが、2012年に活躍した、特に女性アーティストの多くに〈家の中感〉があったのは確か。壁に向かって体育座りして聴きたくなる、メロウで内向きな世界観を提示した転校生やハルカトミユキ、そしてムズ痒い心の葛藤や移ろいをふんわりラップに映した泉まくらはジャケからして自室だった。また曲調に闇はないものの、恋と性を赤裸々に押し出して女子の本質を晒したさめざめも——一応セックスする場所はベッドルームだしってことで!

これを閲覧してから、また改めて色々調べてみたのですが、やっぱり最終的には「これぞ!」という明確な定義はないようです。

ベッドルームポップに限らずポップ、ロック、パンクなどメジャーな音楽ジャンルも定義づけようとすれば難しいように、ベッドルームポップもやはり「これがベッドルームポップである、これに当てはまらないものはそうでない」という明確な線引きをすることは難しいようです。

 

「これがベッドルームポップだ」という要素を羅列してみる

とは言えもちろん「傾向」はあり、ぽろぽろと聴いていくうちにベッドルームポップというジャンルに分類される楽曲には、次のような要素が含まれているように感じはじめました。

  • ミドルテンポで心地よい
  • リバーブ強め
  • 最初から最後まで一定のリズムである
  • 過剰な盛り上がりや過剰なドラマチックな展開に乏しい
  • 全体的な浮遊感がある、ふわふわしている
  • 入眠BGMに利用できそうな静けさと心地よさ

やや偏った意見ではありますが、おおむねこのように構成されているのではないでしょうか。

 

ベッドルームポップと一緒に思いを寄せたい「ドリームポップ」

ところで、ベッドルームポップがドリームポップの系譜にあることは明白です。

ドリームポップこそ定義に難しいものですが、Wikipedia先生から引用してみましょう。

ドリーム・ポップ (Dream pop) とは1980年代から発展したロックのサブジャンルのひとつ。元来はめまいを誘うような浮遊感のある音世界が特徴で、エコーやリバーブ、ディレイ・エフェクトなどを駆使して演奏される。

ということで、前述の「浮遊感」や「リバーブ」はドリームポップ系譜ならではの要素と言えます。そしてドリームポップに分類される楽曲およびアーティストが入眠BGMに適さないかと言えばそんなことはありません。

ドリームポップの「ドリーム」というワードに含有される意味合いは色々ありますが、将来の夢的な意味でなく「眠っているときに見る夢」であれば「ベッドルーム」との親和性は言うまでもありません。

 

ベッドルームポップとドリームポップの違い

ではベッドルームポップとドリームポップはどう違うのかという話。ここからはますます話が抽象的になっていくのですが、ベッドルームポップの方が不思議と人の気配を感じる楽曲が多いように感じます。

音楽はすべて人為的に構築されたものである、という前提の上で、イヤフォンやスピーカーの向こうに人の気配がある音楽とない音楽があると思うのですが、先ほどと同様にドリームポップのWikipediaを見ていくとこんな記述がありました。

特徴としてリフよりも幽玄なムードに焦点を置き、高音域の女性ボーカルや囁くような男性ボーカル、内省的な題材の歌詞などがあり、アルバムジャケットにはぼやけたような淡い色彩のものや飾り気のない殺風景なデザイン、またはこの二つの要素を足したものが好まれた。

「内省」と「殺風景」、これは確かにドリームポップの最重要キーワードです。ドリームという言葉そのものが抽象的であるように、なるべく他者や体温を排除した安全なジャンルであるからこそ、惹かれる人はとことん惹かれる存在になっていると思います。

それに対し「ベッドルーム」となると、そこには必ず人がいるという前提が色濃くなります。睡眠と営みのためのベッドルームが、人の生活とどれほど密接かということ。

これによって、ドリームポップよりも主体性が強く、ますます内省的なジャンルとして確立されています。

日本語で例えるなら、ドリームポップが客観的な静けさの中にある「寂しさ」であり、ベッドルームポップが社会の中にいるからこそ際立つ個人の情緒にフォーカスした「淋しさ」

音楽を聴きながら言葉の意味合い、しかも日本語に変換したものにばかり固執するのもおかしな話だと思うのですが、つまるところ、こうした楽曲たちに「ベッドルーム」という言葉をあてた人、めちゃくちゃいいセンスやな~ということ。

 

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